学科試験だけで自動車運転免許証を取得することはできません。
しかしベルギーでは無線免許を手にするまで、どのようにしてQSOすれば良いのかを学ぶ方法はありませんでした。つまり学科試験だけでアマチュア無線の免許を取得し、交信できるようになるのです。ですから初心者のオペレーションは、お世辞にも聞いていられるものではありませんでした。再び自動車運転免許証に例えるなら、学科試験だけを受けて免許証を取得した大勢の人が、運転の経験も無しに公道を走っているのわけですから、それを想像してみてください。ベルギーのアマチュア無線は、今まさにこのような状態にあります。
私(筆者)とて、ハムになって初めの数年間は多くの失敗をしたものです(今でも失敗は無くなりませんが、以前よりは随分と減りました)。私は日の浅いオペレータから熟年のハムまでが、手早く「プロの運用」が行っていただくのに参考になればという願いからこの文章を記しました。私が起した失敗の多くは、当時の熟年オペレータの多くによる「必ずしも上手ではない」運用をしたために起こったと思われますが、そのことは責められるべきではないでしょう。ハムバンドでどのように交信をすれば良いか、これまで明確なガイドラインが存在しなかったのですから。
正しい運用を行うことの重要性は軽んじるべきではありません。つきつめると、私達が送信するすべての信号は、ハムであれ、リスナーであれ、あるいはその他、誰にでも傍受できるのです。しかし、それは理由の一つでしかありません。もう一つ心に留めるべき理由は、私達の信号が送信された瞬間、自分の国の代表者として受信をしている人の耳に届いているということです。
ごくわずかな慣例さえ理解すれば、どのバンドにおいても快い送信ができるようになります。これから私がご案内する、良い「運用の方法」への旅にご一緒ください。
1. ハム用語
まずは、ハムに関する正しい用語を身に付けましょう。例えば、「Merit four」ではなく 「Readability four」と表現するのが正しい表現だということを理解してください。また、フォネティックコード、CWの略称、Qコード、ナンバーコード(73/88)等は、日本語に続く第2言語と呼べるほど身に付けた上で使用してください。また、フォネティックコードは、常に正しく使用することが重要です。例えば、"AlfaのA"であり、 "Alaba maのA"と言うのは間違いです。これについては8章(PILEUPS)で詳細にお話しします。
2. 聞くこと
なりたてのハムとしては当然、今すぐにでも交信を開始したいところでしょう。ですが、まずは落ち着いてマイクやキーボード、電信キーから離れ、交信を始める前に、送受信機の「すべての」機能を理解してください。特に送信に関する部分は、初心者が失敗を起こしやすところですから特に注意を払う必要があります。
3. コールサインの正しい使用法
自分のコールサインを正しく使用してください。あなたはこの趣味を楽しむために、厳しい試験に挑み、そして乗り切ってきたはずです。あなたのコールサインはあなただけのものですので、誇りを持ってください。また、コールサインを正しく使用しなければ、合法的)な送信にはなりません。VHF帯において4ZZZというコールサインを聴いたことはありませんか?私が知る限り、これはイスラエルではなく日本の局からの信号です。正しくはJA4ZZZです。コールサインはプリフィックスとサフィックスの組み合わせで構成されています。この間違った使い方はHFにおいても見かけることがあります。例えばあなたの車が盗難に遭ったとしましょう。警察に通報する際に、車両ナンバーの一部だけを告げますか?それとも完全なナンバーを伝えま すか?
4. 礼儀正しく
この文書の中でこの章が最も簡潔ですが、まぎれもなく最も重要な章です。いかなる時も、礼儀正しくいてください!あなたの交信は多くの人が受信しているのです。詳細については'Conflict Issues'の章でお話ししますが、礼儀正しくさえ行動すれば、ハムの世界でもそれ以外の世界でも、長い間その世界を楽しむことができるでしょう。
5. VHF/UHF帯でリピータを使用する際のポイント
これ以降の章はHF帯でDXと交信を前提としていますが、その大部分はVHF/UHF帯などにも該当します。
特にVHF/UHFのリピータは、モービル局やポータブル局にも遠距離通信ができるようにと設置されています。固定局のオペレータは、このことを念頭に置いてください。固定局間のようにリピータを介さずに交信することが可能であれば、わざわざリピータを使用する必然性はありません。
また、誰にもリピータを独占する権利はありません。これはリピータに限らず、あらゆるバンドでの運用についても言えることです。リピータ以外の周波数では、「最初に利用を始めた者が使用、また保持できる(first come, first served, and somehow keep)」という原則がありますが、これはリピータでの交信には当てはまりません。優れた機能を持つリピータは、より多くの人に使用されるべきです。特にモービル/ポータブル局であればなおさらです。
リピータを介した交信の場合、'over'の後に短い余白を入れるのは、良い(あるいは、むしろ避けられない)慣習です。この空白があれば、他局が割って入ることができます。'over'の直後にPTT(Push to Talk)を押して、他局が入ってくることができるようにしてください。
6. どのようにQSOをするのか、何を話せばよいか
はじめてバンドを受信してみると、多くの交信がコールサインとシグナルリポートの交換だけに終始しているかを知って驚いてしまうことがあります。もちろん、全ての交信がこのようなものである必要はまったくありません。私自身、交信を始めて間もない頃は長くて実のある交信を好む、筋金入りのラグチュアーでしたので、こういった交信には嫌悪感さえ持ったものです。でも、このような簡潔な交信が悪いわけではありません。私もある時期を境に、比較的短い交信を好むようになりました。すべて個々の好みの問題なのです。
アマチュア無線はやや技術的な趣味ですが、交信で話す内容は技術的な事柄に限定される必要はありません。かといって、アマチュア無線はスーパーのお買い得情報を交換するためのものではありません。このあたりのバランスは何より大事ですが、あなたがご自身の良識で加減してください。
ただし避けなければならない話題を、具体的に挙げることができます。宗教、政治、営利目的の宣伝活動等がそれらに該当します。また、放送(一方通行の音声や音楽の送信)も禁止されています。
ベルギーの初級免許読本には、「オペレーションの慣習と手順」の章があり、交信の方法が記されています。以下は、その引用に一部追記を加えたものです。
- ある周波数において送信を始める前に、その周波数を他局が使用していないか入念に確認してください。
- 周波数が使われていないことが確認できれば、CQを送信してください(CQは不特定な相手を呼んでることを意味します。これはI seek youが転じたものとされています。また、無線以前の有線通信時代におけるCQについて、Pat(W5THT)のサイトに記述があります)。CQを出す正しい手順は、7章'How to call CQ?'で詳細をお話しをします。
- 交信中におけるコールサイン表示は簡単です。まず相手のコールサインを、そして自分のコールサインを告げます。例えばあなたがON4ZZZZだとすると、「ありがとうございます。マイクをお返しします。ON4XXXX (de) ON4ZZZZ」となります。この順序を容易に覚えるヒントをお教えしましょう。必ず相手に礼儀を尽くし、先を譲るということです。
- 送信の終わりには必ず、自身のコールサインを告げてください。また、コールサインのアナウンス無しで短い送信が繰り返されるような交信の場合、5分に一度は自身のコールサインを告げてください。(国によっては10分とするところもあります)
- 相手から自分へと送信が移行する際は、短くても時間的な空白をおいてください。このようにすれば、他局が交信に割って入ることができるようになります。いつまで待っても入れなくて気分を悪くさせる人を出さないよう、十分に注意を払ってください。
- 一度の送信の間に、込み入った話を複数並行して行わないようにしましょう。一回の送信が長引くだけでなく、複数の話題に触れると、相手が送信する頃には最初に話していた内容を忘れてしまう可能性さえあります。また、相手にとって母国語でない言語で話している場合は、相手に考える時間を十分与えるようにしてください。
- 電話での運用の際には、話し終えた際に'over'と告げるようにしましょう。これは必ずしも必要ではないのですが、便利な慣習です。このように'over'と告げる最適なタイミングは、経験を重ねれば自然と身に付きます。
- CWでは、送信を終える際に'K'の文字を送信します。(これは'Key'の頭文字に由来します)。また、'KN'というコードを終えた送信はより具体的な意味を持ち、直前に示したコールサインの局のみからの返事を期待するという意味になります。
- またCWでは'Stop Keying'の略である'SK'を送ることによりQSOの終了を表します。ですから、'SK'と送れば、その通信は完全に終了することになります。
- 音声通信では、'over and out'という表現は正しくありません。相手に送信を渡すときは'over'、QSOの終了時には'out' とだけ告げます。
ハムというのは経験を積むにつれ、かつては自分も初心者であったことを、ともすれば忘れがちではないか、とある時に気付きました。HFでの'CQ DX'の呼びかけに対し、「DXでない」局が呼びかけるのはよく見かける光景です。また、そのことに対して呼びかけた側が厳しく注意し、呼んだ方が気分を害することになるということも珍しくありません。
この場合、双方に何かしら非があると考えられます。まず呼んだ方(初心者としましょう)ですが、'CQ DX'の呼に対して近距離にいる自分は未だこの時点で応答しない方がよいということを理解するべきでした。また、対するCQを出した局は、とにかく交信をしたいという気持ちから同じような失敗をした頃の自分を思い出して、初心者だとの判断し話し方に配慮をするべきでした。
私自身このような状況に遭遇した場合、この局をログし、実は自分はDXを探している旨を伝えます。ここで殆どの初心者はすぐに私の意図を理解し、それ以降は一段の注意を払うようになります。同時に私との交信をログに記入できた事を大いに喜んでくれることでしょう。まず楽しむことが何より大事です!このように、まず万人にQSOのチャンスを与え、決して初心を忘れないでほしいのです。
7. CQを出す
まず、使用しようとする周波数がだれも使っていないことを確認します。このためには、周波数を聞いてみるだけでなく、実際に呼びかけ、尋ねてみるのです。たとえばSSBにおいては、しばらくモニターした後に、「この周波数は空いていますか?」という質問に続けて自分のコールサインを告げます。しばらく待って応答がなければ、再度同じ質問を呼びかけ、自分のコールサインも告げます。これでも応答がなければ、その周波数上でCQを出してください。
CWやRTTYの場合、'QRL?'と送信します。クエスチョンマークだけで事足りるという考えもあるようですが、意味が不明確となりますから正しいとは言えません。その周波数を既に使用している誰かが、自分のコールサインを尋ねているのだと取り違える可能性があります。この場合、'COP'シナリオが起こる可能性があります(12章参照)
それに対して「QRL?」なら他に解釈のしようがありません。この送信には、周波数の空き状況を確認しているという具体的な意味があるからです。クエスチョンマークだけでは複数の解釈があるため、この状況で使用されたと理解する必然性がないのです。
CWの場合、問いかけた周波数が使用中であれば、次のいずれかの応答があるでしょう。
- R (Received-Roger)
- Y (Yes)
- YES
- QSY
日常的な交信であれDXであれ、トラブルの多くはオペレーションの最も基本ルールに沿うことで回避できます。なにはともあれ、まず「聞く」というのが、それです。これとともに魔法の合言葉'QRL?'を併用すれば、CQを出すための空き周波数は難なく見つかるはずです。
- CQの悪い例: 「CQ」10回の後に自局コールを2回告げ、応答を待つ
良い例: 「CQ」を2回の後に自局コールを10回告げる (繰り返しますが、4回が最適です!) - CQの際に大事な点はCQではなく、コールサインです。ひょっとすると受信している相手は地球の裏側にいて、受信感度がよくない状況かも知れません。この場合、受信者はCQよりもあなたのコールサインに関心があるはずです。CQ15回、コールサインを1回、そして直ちに「応答を待っています」…というような呼びかけを、私は幾度となく見てきました。これはまったく無意味です。
8. パイルアップ
DXを楽しむ機会が増えると、パイルアップに遭遇する可能性も高くなります。珍局がバンドに現れると、ただちに交信を希望するアマチュアが群がります。その群れは交信が終わると同時に、互いに覆いかぶさるように珍局を呼び出します。このような状態をパイルアップとよびます。
パイルアップを起こしやすいのは、なにも希なDX局ばかりではありません。DXぺディションはよく、無線文化がほとんど皆無の国や地域、ときには無人に近い島を活性化させることを目的に行われます。これを競技と呼ぶならは、限られた時間内にいかに多くのハムと交信を行うことができるかを競う競技です。当然このような状況では、一人でも多くのハムと交信する機会が持てるよう、交信の一つ一つはなるべく手短に終えることが有利になります。参加中のハムは、あなたのQTHや機材、ペット犬の名前などには興味がありません。
このようなDX局やDXぺディションのログに自分のコールが記入されるのに、もっとも確実な方法はなんでしょう?
なぜないレコード
それは、聞いて聞いて、聞きまくることです。
それでは、なぜ聞くことが大事なのでしょうか?なぜなら、聞かない方がただただ成功率が低いからです。パイルアップをくぐり抜け、返答を勝ち取るのは、間違いなく最も注意深く聞いているオペレータです。
まず注意深く観察してみると、DX局のクセやリズムが見えてきます。また、目的のDX局がスプリットするかどうかが判ります。この待ち時間は、あなた自身の送受信機器の状態を二重チェックするのにも有効です。
- アンテナの選択は正しいか?
- SPLIT機能が有効か?
- 送信機器が空いている周波数に正しく設定されているか?
- あらゆる送信の前に、DX局のコールサインが正しく聞き取れていることを確認する。
手馴れたDX局ならPileupが進んでいると判断すると、SPLIT運用に切り替えます。こうすれば、使用する周波数がクリーンになり受信する相手にとって聞き取り易い状態になります。逆に不慣れなDX局であればSIMPLEX運用を続け、やがてパイルアップが手に負えなくなりQRTとなります。
このような状況でも、あなたがDX局と交信中であれば重要な役割を果たすことができます。交信相手に、やさしくSPLIT への切り替えを提案してください。もちろん、呼ぶ局数が増え過ぎた場合に限ります。うまくSPLITに切り替えさせることができれば、他のDXer達に感謝されることでしょう。
以下に、想定されるいくつかのPileup状況を記載します。
A. SSB SIMPLEX PILEUP
SIMPLEX pileupが起こった際に通信を成功させるコツはなんでしょう。- 前回のQSOが「完全に」終了するのを待つ
- タイミングはとても重要です。前のQSOと同時にコールを始めれば、成功する可能性は限りなく低くなります。
- およそ7秒待って、「一度だけ」コールしてください。
- とにかく聞くこと
前のQSOの終了直後にコールすれば、あなたのコールは同時に呼ぶ数多くの信号に埋もれてしまうでしょう。Pileupにいる人の多くは2回、多くなると3、4回と続けてコールサインを繰り返します。また、DX局はそのうちの一局に応答していたとしても、皆が聞きもせずに呼びかけ続ければ、この応答もまた聞けないことになります。
およそ7秒ほど待った頃には、pileupのほとんどが一息つくことになります。この間を狙って、一度だけコールを行い、そして、応答を待ってください。
- コールはなるべく早く短く行いましょう。フォニックをゆっくり読み上げることは無意味です。
'Oscar November Four Zulu Zulu Zulu Zulu'が正しい話し方で、それも素早く行います。'Ooooscaaaar Noooveeeember Fooouuurr Zuuuluuu'などといった呼び方は時間の無駄であるだけでなく、受信側の局にとっても聞き取りやすくなることは まずありません。 - pileupに参加する際には特に、正しいフォニックを使いましょう。
フォネティック(AlfaからZuluまで)は、無線通信に於いて正しく文字を伝えるために使用されます。このために、アルファ ベットの各26字に単語がそれぞれ割り当てられています。DX局は、pileupのノイズの中からこの単語を聞き取ろうとします。 フォニックが聞き取りにくくなると、受信側は困惑し、無駄に疲労することになってしまいます。この状況にあって一般的で ないフォニックを使用することは、よりストレスとなり得ることは容易に想像できるでしょう。
コールサインを呼ぶ中で、ほんの一文字だけ一般的でないフォニックを使用したために、受信側が聞き返す状況が、あまりに 多く見受けられます。
例:
'Lima'の韻は、カミソリのように鋭く、聞き取り易いです。多くの人が代わりに'London'を使用しますが、信号が弱い場合に はDX局は'Lima'を聞き取れても'London'は聞き落とすことになります。
さらなる例:
Bravo - Baltimore、Echo - Easy (非常に悪い)、Hotel - Honolulu (悪い)、Juliett - Japan、Kilo - Kentucky、Lima - London (非常に悪い)、November - Norway (非常に悪い)、Oscar - Ontario/Ocean (非常に悪い)、Papa - Portugal (非常に悪い)、 Quebec - Quitto (非常に悪い)、Romeo - Radio、Sierra - Santiago、 Tango - Toronto (非常に悪い)、 Uniform - United/University (悪い)、Victor - Venezuela (悪い)、Whiskey - Washington (非常に悪い)、 X-ray - Xylophone (非常に悪い)、Yankee - Yokohama (非常に悪い)、 Zulu - Zanzibar (悪い)
- もしDX局がコールを正しく聞き取って応答すれば、あなたがわざわざ時間を浪費せず、リポートだけを送りましょう。 また、交信の終了時に再度自身のコールを伝えても良いのですが、DXぺディションなどでは避けるべき行為と言えるでしょう。
交信はなるべく素早く完了する方が良く、pileupにいる他局にも感謝されるます。通常、リポートだけを送り、不要な情報 を送信しないのが望ましいのです。QSOが終了次第、DX局は次の交信相手に移ることができます。 - pileupに参加する場合には、決して交信相手のコールを呼ばないでください。先方は自分のコールは把握していますので、 これは時間の無駄でしかありません。
- 自分のコールを呼ぶのは1度にしてください。2度呼べることがあるかも知れませんが、これさえ推奨はできません。これは、 相手側が聞き取りに苦労しているか、明らかに手馴れていない場合にのみ限定されるべきです。3度呼ぶなどは論外です!
- 相手側がコールサインの一部分だけを返して再度伝える必要が生じた場合、欠けた箇所は一段強調してください。 例:
QRZ, XU7ACV.
(不協和…7秒の待ち時間)
ON4zzzz.
ON4zzzz, you are 59, QSL?
QSL, 59.
Thanks, QRZ, XU7ACV
QRZ, XU7ACV.
(不協和…7秒の待ち時間)
ON4zzzz.
4zzzz, you are 59, QSL?
ON4 - ON4zzzz, 59 , QSL?
ON4zzzz, QSL tnx, QRZ, XU7ACV - もしDX局があなたのコールとは一部でも異なるコールで応じたなら、沈黙してください。もう一度言います。 沈黙してください。 沈黙してください!
DX局は、応じた相手ではないあなたのコールを聞きたがっているわけではありません。pileupに参加する皆がこの論理的 な規範に従いさえすれば、DX局はより多くの局と交信できるはずなのです!実に残念なことですが、自己中心的なDXerが 多く見かけられます。DX局が自分に応答しているわけではないことを知りながらも、呼び続けるのです。これでは、時間 を浪費してまで身勝手さを露呈しているようなものです! - もしDX局が'ONLY'という単語に続いてコールサインの一部を告げた場合に意味するのは、DX局側が特定の局との交信 を試みながらも、pileupに参加するマナーの悪い人達のために苦戦しているということです。
- もしDX局が'JA ONLY, Europe Standby' と指示した場合、彼は日本の局とのみ交信を希望しているということです。 もしあなたがヨーロッパの局なら、応じないでください。また、「ヨーロッパを希望します」とか「ヨーロッパはいけ ませんか?」とpileupに対して呼びかけるのも避けてください。
- もしあなたがQRP(CWで5W以下、音声なら10W以下)を運用していても、コールサインに続いて/QRP ('stroke QRP') は送信しないでください。絶対に! ベルギーの電波法においては、これは認可されていないサフィックスです(他の多 くの国においても同様であると思います)認可されているのは、/P /M /MM /Aのみです。pileupの中にあって、コール サインのない'stroke QRP'だけといった呼びかけが聞き取られる可能性なんてどれだけあるでしょう。結局DX局はコー ルサインを聞き返さなければなりません。これも時間の無駄です。もちろん、'ラグチューQSO'でなら、あなたがQRPを 運用していることを伝えてもまったく問題ありません。
B. CW SIMPLEX PILEUP
- これまでのお話はすべてCWにも該当します。
- 決して 'de ON4ZZZZ'と発信しないでください。単純に 'ON4ZZZZ'でよいです。
モールス信号において'de' は'from'を意味しますが、pileupにおいてはコールサインの一部と混同される可能性が増えるだけです。 - DX局に対しては、決して'k'(送信要求)を送ってはいけません。 不必要な情報は、間違いが起こるチャンスを増やすことに繋がります。極端な例について13章(2文字のコールサイン)においてお話しします。
呼んでいる側が、2文字分以上の時間送信しなければ、DX側は恐らく送信が終了したと解釈します。 - ペースを合わせて下さい。
しばらくpileupを聞いてみてDX局の送信速度を把握したら、どのような速度で送信する局がDX局に拾われていくかが 見えてきます。交信に成功している局の平均的な速度で送信するようにしましょう。DX局が毎分40字送信するから といって、同じようなペースの相手ばかり選んでいるとは限りません。むしろ、自分より遅い速度の局を選んで交信 している場合が多いです。このような場合、あなたも速度を下げるべきです。 - もしDX局が 'ONLY'と、時にこれに続く'KN'(送信希望を意味する'K'ではない)のみ送信した場合、これは相手が特定 の局とのみ交信を希望していることを意味します。この発信は通常、DX局が交信しようとしている相手に多いかぶさる pileup参加者に対して、そろそろ辛抱できなくなってきていることを意味します!
C. RTTYやその他のデジタルモードでのSIMPLEX PILEUP
Digimodeにおいては、自分のコールサインを一度きりしか送信しないのはあまり適切ではなく、2度送信することを推奨します。DX局の状態によっては3度繰り返す必要がある状況も出てきますが、通常はなるべく控えるべきです。
うまくタイミングを見計らって送信しましょう。DX局が早期にSPLITモードに切り替えてくれれば、その必要は全くな くなるのですが。
D. SSB SPLIT PILEUP
さて、DX局がSPLITモードに切り替えました。なんたる幸運でしょう!これでSIMPLEXモードと比べて交信可能な局が明らかに増えるはずです。
SPLITモードに切り替えた局のログに載るコツはなんでしょう。
フィンガーピッキングスピードを向上させる方法
- 聞いて、聞いて、また聞いて…
- これまでに述べたSIMPLEXモードに関するコツを復習してください。そのほとんどがSPLITモードにも該当します。
- トランシーバはSPLITモード用に設定されていますか?
- コールを始める前にDX側と呼ぶ側の両方のワッチを少なくとも数分行い状況を把握すれば、あなたに応答してくれる 可能性は必ず増加します。
数分間聴き続ければ、
- DX局が運用している「リズム」を把握することができます。
- SPLITのための送受周波数の差 (5から10KHz上か下)を知ることができます。この周波数差はDX局側が指定すること が望ましいですが、必ずしも指定してくれるわけではありません。その場合は、あなた自身がワッチすることで知ることができます。
- そのDX局との交信が可能かどうか判断できます。(例えば、DX局が日本ばかりと交信していれば、その地域との伝播 状況が特に良好だ、とかです。)
- DX局の受信周波数が、SPLITウィンドウの中をどのように移動するか知ることができます。例えば、ウィンドウ内を低い 周波数から順に高い方へと受信周波数を移動するとか、また上端に達した後、今度は一旦低い端に戻るのか、それとも折り返 すように受信周波数を下げて行くとか、です。
- DX局がpileup中を、どのぐらいの周波数間隔で移動するかも判ります。例えば、SSB Splitウィンドウ幅が10kHzだとすると、 DX局はその中を2kHz毎に移動するか、それとも3, 5kHz毎に移動するか。それとも大雑把に低い周波数域をしばらくさまよった 後に中域、高域へと移動するのか、等です。
- 自身のコールサインを「1度だけ」呼んで見ましょう。
- あとはひたすら「聴く」のです。
繰り返しますが、DX局がコールサインの一部を復唱していても、明らかに自分に対して応答しているのでなければ、沈黙しましょう。これはいくら強調しても足りないぐらい重要なことなのです。例えそれがsplit運用の最中であっても、自分の番でないときに呼びかけたりすれば他局のQSOを損ねることになりますし、ひいてはDX局の運用しているリズムを壊すことになるのです。このような行為が散見されたとしても、あなたが実行してよいというわけではありません。バンドの上では淑女/紳士でいてください!
逆に考えてみま� ��ょう。このような行為を行わなければ…言い換えると「聴く」ことを続けていれば、DX局がどの周波数の局を呼んでいるか見つけることができるのです。
DX局側がpileup中からコールを拾う能力によって多少異なるものの、通常はコールサインを一度だけ言えば良いということに経験から理解して行くことでしょう。2度の呼びかけは絶対的な上限で、3度は許されません。これは重要な事柄ですから何度でも強調します。
DX局は個々の運用スタイルをもっています。あなたの好みに合うスタイルあれば、そうでないものもあるでしょう。中には、 pileupを解消するために、短時間で多数を裁くスタイルで運用する局もあります。あなたへの応答でなければ、沈黙し、そして「聴く」ようにしてください。
E. CW SPLIT PILEUP
- SSB SPLIT pileupに関するテクニックのほとんどが、そのままCW SPLITにも適用できます。SSB SPLITの章を参照してください。
- キーイング速度を、DX局のペースに合わせましょう。まずはしばらくワッチし、交信している局の平均的な速度を把握し 、その速度でコールをしてください。大抵それがDX局にとって運用しやすい速度なのです。
- 自分のコールサインを、ただ一度送信したらDX局を「聴く」ようにしましょう。CWにおいて自身のコールを二度以上続けて 送信することは殆ど無意味です。
- それでも、コールを二度続けて送信するならQSKモード(CW full break-in)に切り替えてください。このモードなら、コール 中でもDX局が送信を開始したことを確認することができますので、一旦コールを中断し、別のVFOを使って相手が誰と交信して いるかを確認しましょう。
F. RTTY (およびその他のDIGIMODE) SPLIT PILEUP
- このモードにも、SSB SPLIT pileupに関するテクニックのほとんどがそのまま適用されます。SSB SPLIT PILEUPの 章を参照してください。
- 自身のコールを2度送信したら、スタンバイしてください。しばらく運用すれば気付くことになるでしょうが、コール を3度も繰り返してスタンバイすれば、DX局は既にどこか別の局にレポートを送信しているということになります。この 送信の中でDX局の交信相手局のコールが運良く判別できれば、別のVFOを使って交信相手の信号を探すことができます。 ですが大抵はそれほど運よくことが進みませんから、DX局をワッチして再びコールできるタイミングを待つことになります。 通常、コールサインを2度繰り返せば順調に進みます。
9. テール・エンディング
'Tail ending'... これは20数年前急に流行し、現在に至るまで議論の対象となっています。
ではTail endingとはなんでしょうか? 2台のVFOがトランシーバに組み込まれるようになってから(はじめは複数の機器が用いられ、やがて機能としてトランシーバに組み込まれました)、SPLITモードでの運用がDX局やDXぺディションでの運用テクニックとして一般化しました。pileupに加わる側はサブVFOでQSO中に呼んでいる側の信号を受信し、QSOが成立したと判断すれば、QSOを終えようとしている局の信号に被せて呼び始めるのです。これが「Tail (尾) ending」です。この時、尾を踏む側の出力が十分に大きければ、まだ終了していない交信に上塗りすることになり、DX局が交信終了を告げると同時にしっぽを踏んだ局に応答することができるのです。
一時、このような手法を用いることにより時間が節約され、より多くの局がQSOできると考えられていました。しかし時が経つとともに明らかになったのは、ごく一部のオペレータだけが正しい作法でTail endingを行うということでした。多くのオペレータは、頻繁に見切り送信をおこない、継続中のQSOを妨げ、伝達内容を繰り返すということになったのです。つまり、コールサインの一部がコピーできなかったり、レポートを確認できないことが生じるのです。
最近のようにオペレータの倫理観が低下してしまうと、むしろ継続中のQSOを上塗りするのが正当であると多くの人が考えているのではないかと思えることさえあります。DX局が'QRZ'などで問い返すことなく次の交信を始めるのを耳にすれば、彼らはとんでもない状態になってしまうのです。
それでは、Tail endingが作法として認められるべきかどうか?
今日のコンセンサスでは、答えは「NO」です。
10. DXウィンドウ
ハムが交信に使用できる周波数帯域は、各国際機関により規定されています。しかし多くの場合、各モードがどの帯域で使用されるべきかはこの規定に含まれません。この事態をより整理するために、IARU(国際アマチュア無線連合)による区分 (band planning)が定められるのです。たとえば"IARU Region1 band planning"は、80mバンドにただ二つのセグメント(3500-3510kHzおよび、3775-3800kHz)を設け、大陸間を跨る交信を優先すべきとだけ定めています。また20m帯の一部を(14,195 +/- 5kHz)、DXぺディション用のウィンドウ(帯域)と定めています。これとは別に、規則として定められてはいないものの、事実上の標準としてDXに用いられている周波数帯があり、DXぺディションやDX局が使用しています。
これらのDX用ウィンドウをよく知り、そして尊重してください。
過去に私が中央アフリカからQRP局を運用した際に、レアな場所から参加できることを喜び一つでも多くのQSOができることを楽しみにしていました。また、多くのDXerが何か障害でも生じないかと、この周波数をワッチしてくれていたことも知っていました。
それだけに、これらのウィンドウがヨーロッパや米国のオペレータがあまりにも普通にこの周波数域を使用していることに気付いたときは大きく落胆してしまいました。
多くの人が、これらの� �ィンドウを「普通」の局が'CQ DX'を出すために存在していると考えているようです。そうではなく、これらウィンドウがローパワーながら認識されたいと考えている局のためにあると私は考えます。一般的な局はCQ呼び出しのためではなく、希少なDXを探すときにのみこれらウィンドウを使用するべきです。
以下に記す「デファクト」のDXウィンドウは現行のものであり、十分に監視する価値があります。
- SSB: 28490-28500, 24945, 21290-21300, 18145, 7045, 3790-3800, 1845 kHz;
- CW: 各バンド下限周波数から5KHzと次の周波数: 28020-28025, 24895, 21020-21025, 18075, 14020-14025, 10103-10105, 3500-3510, 1830-1835 kHz;
- RTTY: ± 28080-21080-14080 kHz.
11. 競合
ここで一つ重要なことを考えて見ましょう。アマチュア無線の周波数帯は趣味を同じとする多くの人々が共有しているものですから、常に競合は起こりえることです。これについて論じないのは反って非現実的ですから、多少のアドバイスも何かしらの役に立つことでしょう。
第4章でもお話ししましたように、常に礼儀を心がけましょう。これが(ある意味、長期的なものを含む)競合を解消する唯一つの手段ではないでしょうか。
まずは、極端な例からみてみましょう。ここでの登場人物は、シシリー在住のIZ9xxxxです。このPipoと称するOMには、 DXのメインストリートでもある14,195kHzでヨーロッパやアメリカのに対してCQを出す(悪い?)癖がありました。彼がこの周波数に出現する度にバンドに問題が生じ、この周波数域を独占するかのような態度に世界中のDXerが辟易している有様でした。
しかし、この状況も見方によっては、逆に以下のような見方ができなくもないのです。
人はゴッティの兄弟を知っている
- PipoはCQを出す前に「この周波数は使用されていますか?」と呼びかけ、使用中であればQSYをしていました。
- Pipoは、法令により許可された周波数を使用していました。(これについて後述します)
- 14,195kHzはDXウィンドウ14,190-14,200kHz内にあります。この帯域はIARU Region 1の規定により、2006年1月1日に DXぺディション用の帯域となりました。以降Pipoは別の周波数の使用を余儀なくされましたが、今のお話ししているのは それ以前のことです。
- Pipoが(2006/01/01以前に)14,195kHzにて合法にCQを出すたび、多くの局がこれを妨害しました。これらの局はコー ルサインも名乗らず、合法的な送信を行っていませんでした。(つまり海賊局です)
見ようによっては、Pipoは意図的に他人の楽しみを奪う反社会的な人間であったとも言えます。しかし、彼の行動はすべて法律で認められた範囲にとどまっていました。
このような人間に接する、よい方法はなんでしょうか?
- 少なくとも、妨害という手段に出るのは正しくありません。そして、妨害したあなた自身が違法行為を行う結果になります。 これはPipo自身に対して、彼の側に正義があると錯覚させ、妨害が過激になるほど結果を悪い方向に向かわせることになります。
- 彼の事は放っておいて、さっさとVFOを別の周波数に合わせる
- ごく一般的な態度で接して、なぜ彼がそのような振る舞いをするのか知る努力をする。
もちろん一ヶ月ほどの後、Pipoは14,195kHzに舞い戻っ� �いました。彼が別の帯域でまた同じような目にあったからでしょうか?
また、2005年のこと、K7Cのエクスペディションが盛んだったとき、Pipoが14,195kHzにて「この周波数は使用中ですか?」と尋ねるのをたまたま耳にしました。私は即座に応答しました。「Yes Pipo, by K7C, tnx QSY, 73 from ON4WW」、と。彼は即座に5kHz下がり、 CQを出しました。これでこの件については終わります。
まだ私がハムとしての経験が浅かった頃のこと、21,300kHzにて大変悪質な出来事に遭遇しました。非常に悪名高いON6が、大規模な DXぺディションの最中に域内交信を行っていたのです。私はこの交信に割って入り、可能であればQSYを願いたい旨を礼儀正しく伝え、自らのコールサインで括りました。
その時私が受けた罵倒する表現は、とてもここに記載できるものではありませんでした。それ以後、このON6局と彼に親しいON4がVHF リピータ上で頻繁に妨害に遭っていることを知りました。おそらく彼らの礼儀を欠いた態度が妨害の元となっていたのか、あるいは度重なる彼らへの妨害が、このような精神性を培ったのかも知れません。(今回もそうですが、妨害は法令を違反して行ったものとして扱われます)
もう一つベルギーでの出来事でベテランと二人の初心者の間に見られた例を紹介します。二人のON3局(いずれも初心者)がVHFリピータ上でQSOをしていました。一方が、リピータの入力周波数で他方をよく聞き取れている旨を話し合っていました。ここにON4が現れ、自分が交信を行いたいことを理由に、リピータを去るよう二人に告げました。これはいただけない態度です。先ほども述べたように、常に礼儀正しくあるべきです。ON4が交信に割って入ったま� �は良かったのです。ON3の局もリピータの存在目的を理解しているべきでした。リピータは主にモバイル・ユーザの交信範囲を広げるためにあります。もしON3局が高速道路を時速120kmですれ違うという状態でレピータを使用無しのQSOをしていたなら、QSO交信はすぐにでも終了していたはずです。それにしても、初心者はベテランに怒鳴られることを恥じるものですから、私たちは、逆に初心者を成長してよう働きかけ、接するべきではないのでしょうか?
ここまでに紹介した例は、実際にあったかどうか、そもそも問題ではないでしょう。 まず大前提は「礼儀正しくあること」。あなたが必ずしも相反する考えを持つ人に出会うとは限りません。でも、考えの異なる人に出会う確立の方がはるかに高いのです。
このトピックは、関連 する次の章に続きます…
12. 'COPS' (警察)
ハムの社会は、自浄作用により治安や秩序が維持できるものと考えられています。違法なことが行われない限り、なにかしらの権力が介入することはありません。また、ハムのが警察に相当する機関を必要としているという意味ではありません。しかし、自警に参加できるように自己鍛錬が必要です。
話を、シシリー在住のPipoに戻しましょう。「この周波数は空いていますか?」との彼の呼びかけに、私の応答があと2秒遅ければ、自らをDXの警官と位置づける誰かがPipoに罵声を浴びせたでしょう。これらの罵声が「悪い状況」を「さらに悪い状況」に進化させることは、もはや自然の摂理と言っても過言ではありません。
ここで紹介しているPipoのような考え方の人間は、このような状況におかれると14,195kHzを去るどころか、ます� ��す留まりたくなるものです。そうすると彼はおそらく向こう2時間は妨害に遭い続けることになるでしょうし、ひいてはK7Cエクスペディション自体が取りやめになることに繋がるかも知れません。貴重な時間と多くのQSOが、自警団員を自負するおせっかいな人達のために失われるのです。
- 'Cops'(訳注:「警官」。ここでは秩序維持に貢献しようと活動している人)の多くは、どちらかというと丁寧に応対し ます。また、ほとんどの場合、よろこばしくない周波数使用を制止したり、トラフィックを開放することに成功します。
- 一部のCopsは、目的意識は間違ってはいないのですが、言葉遣いに難があるがために周波数の開放に失敗します。このよ うなタイプは調和ではなく混乱を招きます。
- 3つめのカテゴリに属するCopsは、はじめから場を乱すことを意図して横暴に振る舞います。彼らの卑劣な言葉遣いと礼儀 を欠く態度は、ときに行きずりの別のCopsをも巻き込んで収拾のつかない状態と化します。
Copsに遭遇するのは、どのような状況でしょうか?
- Copsが現れるのは主に、レアなDX局、DXぺディション周波数において、SPLITモードで運用がなされているときです。
- あるDX-erが、SPLITボタンを押し忘れて送信を開始したとします。pileupの誰からも返事が聞こえないことから、おそらく彼は3度4度とコールを続けます。ここらでCopsが出動開始します。
似た状況でCopsが取り得る行動パターンには、中立性や礼儀を欠いた無数のバリエーションがありますが、ここでは取り上げません。上記の例以上に参考とすべきものはないのですから。
では、中立的な立場で呼びかけるには、どのような方法があるでしょうか?
Copとして行動を起す前に、まず以下を検討してみて下さい。
- この行動を起すことにより、「あなた自身」に何のメリットがあるか考えてください。
- 既に他のCopが行動を起している場合は、静かに見守りましょう。
- その局のコールの末尾2、3文字に続いて「UP」「DOWN」とだけ告げ、それ以上のことはしない。
CWの例:
ON4WWが誤ってDX局の周波数で送信しているのを見かけたとします。次のように送信してください: 'WW UP'。もし「UP(あるいはDWN)」とのみ送信しても、おそらくON4WWは自分に対して送信されているのだとは気付かないでしょうから、彼は過ちを正すことなくDX局の周波数での発信を繰り返します。続いて何が起こるかというと、これに誘発された他のCop達もひたすら「Up」「Up」と発信する状況になり、混沌を招くことになります。
このように、必ず相手のコールサインの一部を含んだ上で、「UP」または「DWN」と続けてください。こうすることにより、相手は他でもなく自分に対する呼びかけであることに気付くでしょう。ここで仮に相手のコールサインのすべてを送信に含めると、DX局の通信の一部を遮る可能性が高くなります。
もちろん、誰一人としてCopにならなければと感じない状況が理想ですが、残念ながらここは理想郷では� ��りません。効果的な呼びかけは、直ちに事態を改善します。それに対し、罵声を含む呼びかけは直ちにその逆の状況を作り、パイルアップとDX局の楽しみを奪ってしまいます。
一人の善良なCopが現れるのは幸運です。ただし善良なCopも、二人現れると間違いなく多過ぎます。
SSBとRTTYモードにも、同じ概念が適用されます。相手のコールサインの一部(あるいは、これらのモードにおいては完全なコールサインでも結構です)に続けて、適切な指示を与えてください(listening UP/DOWN)。直ちに DX局の周波数はクリアになることでしょう。
DX-erになれば、Copに対して全く何もしないのが最善であることに容易に気付くでしょう。ネガティブなものを、ポジティブに変えるよう努めましょう。そして「聴く」ことを続けるのです。(またもやこのキーワードが出てきましたね)そうすればDX局をあなたのログに加えることができますし、Copsも上機嫌でいられることでしょう。
最後に一つ。厳密には自らが名乗りをあげない限り、Copsによるあらゆる送信は違法なのです。
13. 二文字コールサイン(部分的コールサイン)とDXネット
第3章で述べましたように、いかなる状況でも、いかなるモードでの運用においてもコールサインを完全に告げなければなりません。
DXネットの多く(ほとんどが15、20、40m帯)ではMOC(Master Of Ceremony)がそのDXネットに参加しているDX局と運用したい局のコールをリストアップします。
このリストを作成する際、MOCがコールサインの最後の二文字だけを要求しているのをよく見掛けます。これは誤っているばかりでなく、違法です。まったく残念なことに、ネット外のDX局と交信する際にこの悪しき慣例を持ち出している人も少なくないようです。これは、DX局やDXぺディションの運用リズムを乱してしまいます。また私が「向こう側」で活発だった頃、ある局がコールサインの末尾2文字を、3度繰り返すのをよく目の当たりにしました。はじめから完全なコールサインを一度告げていれば、5秒ほどで済んだ作業です。不毛な手順により、QSOが3、4倍の時間を要するという結果になりました。
この現象はCWではさほど見当たりません。また、RTTYにおいてはほとんど皆無と言っていいほどです。これまでに遭遇した、悪い見本の最たるについてお話しします。以前、CWでコールを受けました。'XYK XYK' この呼びかけがあまりにも強力な信号だったので、他の局のことを思うと見過ごすわけにもいかず、私がログに拾うことにしました。 'XYK 599'と応答しました。(続くコールサインは架空のものですが、おおよその状況はおわかりいただけるかと思います) 次に、このような応答がありました 'Z88ZXY Z88ZXY 599 K' このOMはご丁寧にも、自分のコールサインの末尾2文字に連続して'K'を送信していたのです(KはKeyの略称で、モールス交信への導入を表します)これが、先方がKで終わるコールサインの末尾3文字を送信しているとの誤解を招いていたのです。これこそ、時間と周波数の浪費以外のなんでもないと思います。
DXネットについて、最後にもう一つ。添付した風刺画がすべてを物語っています。QSOは、いわばスプーンで与えられる食事のようなものです。MOCはしばしば2-way QSOを行うのに単に手を貸す以上のことまで行ってしまいます。人の世話にならないでQSOを行うようにしましょう。その方が楽しく実りある結果に繋がります。
14. QRZ, クエスチョンマークの使い方
DX局やDXぺディションの中には、適当な頻度で自局コールを言わないという悪い癖がある人がいます。これは災いの元です。
バンドをワッチしている(かつDXクラスタには参加していない)人は、DX局の信号を見つけてもコールサインの判明ができません。だから、しばらくしたら'QRZ'、'?'、あるいはCWですと'CALL?'、SSBならば'What's your/his call?'、等と質問の送信を始めます。これほど煩わしいものはありません。DX局がSPLITで運用してしる場合、彼はこれを聞いていません。pileupの局は異なる周波数で送信していますから、'QRZ'、'?'、あるいは'CALL?'の送信は、DXを聴いている局に単に妨害を与えてしまいます。その結果、戦慄すべきCopsが立ち上がり、やがて混乱が訪れます。
このような状況を未然に防ぐには、DXにおける一番大事なルールに従うしかありません。それは「聴く」ことです。決して、'QRZ'、 '?'、'What's your/his call?'と問いかけてはいけません。これは局のコールサインを知る上で有効な手段ではありません。ましてや、この状況において'QRZ'は誤用になります。'QRZ'は、「誰が私を呼んでいるのですか?」を意味するのですから。
15. コンテストの参加局を呼び出すには
コンテストに参加したり、コンテスト参加局をコールする前に、そのコンテストの規定を熟読してください。一部のコンテストでは、交信できる相手に制限があることがあります。そのコンテスト・ルールから、あなたとの交信では点にならない相手を呼ぶのは、なんとも恥ずかしいものです。このような状況において、ログ用ソフトによってはあなたのコールサインを入力することができないことさえあります。以下に簡単ながらアドバイスを。
- コンテスト局は、なるべく短時間に、一つでも多くの局との交信を完了させようとしています。言うまでもなく、交信は手短に!
- コンテストの参加局と交信するときは、決して自分のコールサインを2度繰り返さない。一度で十分です。
- コンテスト局があなたの完全なコールサインを返した場合、自局のコールを繰り返す必要はありません。あとは必要な事項だけ伝えましょう。
- もしコンテスト局が自分以外に応答した場合、おとなしく沈黙してください!
16. DXクラスター
これは常々、議論の的となるテーマです。多くの人が重宝して利用していますが、同時に嫌悪する人も多いのです。
あまりに多くの誤った'DX Spots'が投稿されていることに、時折衝撃さえ覚えます。DX局を見つけたら、ENTERキーを叩く前に、全てのデータに目を通し、ミスタイプがないか再確認しましょう。
また、DXクラスタにはANNOUNCE機能があります。多くのオペレータが愚痴る、唸る、QSL情報を求めるといったかたちで、この機能が乱用されています。愚痴る?唸る?
なんのことかって?以下は、3Y0Xエクスペディションの際に見かけられたAnnouncementです。(また、他の折に見かけたものも含みます)
「3時間も呼んでいるのに、まだ一回のQSOもないよ」
「かれこれ5時間も聞いているのに、誰も覗きもしやしない。しょぼいエクスペディションだこと!」
「下手なオペレータばかりだ、彼らは電波伝播のなんたるかをまるで理解していない」
「なぜSPLITしない?」
「頼むからRTTYしてくれ」
「ビンゴーーーーッ!」
「よし、new one!!」
「これで276達成!」
「ヨーロッパ、頼むからヨーロッパを」
その他、云々…
これは、まったく何の意味も価値もありません。DXクラスタは、DXを見つけるための道具です。それ以上でも、それ以下でもありません。Commentary fieldは、使用しているSPLIT周波数を伝えたり、QSL情報に使用できます。
DXクラスターは、DXをスポットして、多くのDX-erに有用だと思える情報を付加したものです。
QSL情報が必要ですか? それならばコマンド 'SH/QSL callsign'を送信して下さい。
もしあなたが見ているDXクラスタにQSLデータベースがなければ、'SH/DX 25 callsign'がコマンドです。最新の25件が表示され、大概コメント欄の一つはQSL VIAに始まり必要な情報を併記しているはずです。それよりさらに効率的なのは'SH/DX callsign QSL info'です。これは、コールサインに該当する最新の10件をコメント欄付きで表示します。もしDXクラスタからQSL情報を取得できない場合、インターネット上のQSLウェブサイトで相談するのが望ましい対処法です。
あなたの怒りを、他人にぶちまけてはいけません。どうせ時間を割くなら、あなた自身の局や技能を向上させるのに役立つことに時間を割きましょう。
Spotのコメント欄への'Worked 1st call'、'Worked with 5W'というような表記は、DX局に関する情報を提供しておらず、DXer本人のエゴの表れでしかありません。
Spotの多くに見られるのが、spotしている局自身の情報や個人的なメッセージ等です。このような間違った使い方はするべきではありません!
海賊局のspot?海賊は私たちが関わる相手ではありません。無視をしましょう。
我々の親愛なるPipoを覚えていますか?彼のような局を発見した場合はどうするべきでしょう。そうです、無視するのが正解です。
最後に要約です。DX Spotは正しく行いましょう。あなたの愚痴で他のハムの気分を害するようなことは避けましょう。誰もあなたのエゴには興味はありませんが、あなたが提供したSPLIT周波数やQSL Managerに関する情報は、皆に歓迎されることでしょう。DXクラスタの機能を正しく使用してください。もし使い方が解らなければ、調べるまでのことです。マニュアルを参照するには、DXクラスタにて'SH/HELP'と入力するだけですから、熟読してみてください。
注意: あなたのSpotは、DXクラスタのコミュニティ全体が目にします。ここでは悪評がつくまでに、さほど時間を要しません。同様に短い期間で良い印象を広めることも可能です。
ご参考までに、以下のサイトをお勧めします。このサイトのメッセージはとても明確です。 Cluster Monkey link
17. DX局とDXpeditionへのアドバイス
休暇の家族旅行を兼ねて?それとも、海外出張のついでですか? そのいずれでもない理由でDX局を運用しようとするつもりなら、DX-peditionに大金を出費する変な物好きに違いありません。少なくとも奥さんには。
出かける先が希少であるほど、これまでに述べてきたような事態に直面する可能性が増大するのです。Cops、話を聞かない人、その他諸々…。 いろいろな人が群がる中、その状況を制するのは、他でもないあなたなのです。
- 渡航先がスペインかフランスであれば、大したpileupにはなりません。
- バレアース、クレタ、キプロス諸島ではフィーバーが予想されます。
- もしイランに出張することになり、現地でオペレートする機会に恵まれれば、きっと汗だくになるでしょう。
- スカボロー・リーフへクルーズに出掛け、そこでDX-peditionを開局すれば、すごいことになるでしょう。
- QSO毎に、自分のコールサインを必ず告げてください。もし残念なことに、あなたのコールがSV9/ON4ZZZZ/Pなどと いったコールサインなら、せめて3QSOに一度はコールを告げてください。
- もしあなたがsimplexで運用していて、相手のコールサインや相手からの応答が聞き取れないと判断すれば、直ちに SPLITモードに切り替えてください。
- SPLITモードに切り替える際は、受信に使用する周波数を他局が使用していないことを確認し、そこで継続中のQSO を台無しにしないように注意します。
- SPLITモードでの運用中は、必ずQSO毎にその旨を明らかにし、使用している受信周波数をアナウンスしてください。 CWの例: UP 1, UP 1-2, UP 5. SSBの例: listening 5 up, listening 5 to 10 (kHz) up;
- CW では、SPLIT間隔を少なくとも1kHz、可能なら3kHzほどにしてください。送信周波数のキークリックを未然に防げ ば、Copsに干渉させるきっかけを与える恐れがありません。
- SSB SPLITでは、少なくとも送信周波数から5kHzの間隔を確保してください。SSBは時に予想外に広い帯域を専有しま す。SPLIT周波数が2、3kHz程度であればDXの送信周波数に干渉する恐れがあります。
- SPLITウィンドウは可能な限り狭めて、バンドを必要以上に専有しないようにしてください。
- SSB運用時に完全にコールをコピーできなければ(大きなpileupにおいてはよくあることです)、相手に、たとえば 「Yankee Oscar 59」といったようにコールが完全にコピーできていないことを伝えます。
- CWでは、相手のコールサインを完全に受信できてなくてもクエスチョン・マークの送信は行いません。実に奇妙です が、pileupでコールしている人の中には、クエスチョン・マークを「再びコールを要求している」と取り違えることがよ くあります。まして彼らは、あなたがコールサインを要求している相手ではないのですから。
例: 3TA, 599. 悪例: ??3TA, 599 悪例の通りなら、pileupは必ず再発してしまいます。 - いかなるモードにおいても、相手にコールサインの一部分だけを返した場合、完全にコールを受信すれば相手コール を送信し、相手にあなたがログに記入したコールを伝えるよう心がけてください。
以下は、経験の浅いDX局によく見られる状況です。TA, 59. に対し、OH3TAが幾度かコール繰り返します。するとDX局が QSL, tnx, QRZ? と応答します。もちろん、OH3TAは、自分が正しくログ入力されたか、知る由もありません。DX局は、 OH3TA, tnx, QRZ? と応答するべきでした。
完全にコールが受信できなかった相手にレポートを送ったなら、コールを完全にコピーきるまでそのQSOを終了しないよ うにしましょう。pileupは、時に秩序を欠いてしまうものです。あなたが完全にコールをコピーするまで諦めないこと を知らしめれば、やがて呼んでいる局も、やみくもにコールを続けても、あなたには無意味であることに気付き、落ち着 きを見せてくれるでしょう。逆に完全にコールをコピーできないで諦めれば、それはあなたの敗北を意味し、まもなく混 乱が訪れます。
pileupが手に負えなくなれば、一旦QRTして、TX周波数を変更するか、別のバンドに移動してください。 - 常にクールでいましょう。Pileupに怒鳴っても仕方がありません。
- 2文字でのコールには応答しないで、完全なコールサインで呼んでくる局とのみ運用したいことを相手に伝えてください。
- SPLITモード時、相手の局から応答が得られなければ、自分の送信周波数を受信して見ましょう。誰かがあなたの信号を 妨害している恐れがあります。(たとえばCopsなど)
- 高い周波数のバンドでのpileupで対応できる速さはせいぜい40単語/分程度までです。160〜40mのような低い周波数帯では、 状況にもよりますが上限は20〜30単語/分程度です。
- 常にあなたの情報ををpileup側に知らせるようにしましょう。QRTするなら、そのことを伝えるべきです。ちょっと用を足 しに席をはずなら、次のように伝えてください。「QRX 5 (QRX 5 minutes, standby)」。もし別のモードか周波数にQSYするな ら、その旨を伝えましょう。pileup側にとって、あなたの次の行動が読めないということはとても苛立つ原因になるのです。 なにせ誰もがあなたとの交信を希望しているのですから。あなたは注目の的なのですよ!
もしpileupが手に負えなくなってきたら、地域や、コールサインの数字の限定するのも一つの方法です。地域を限定するということは、交信する大陸(例:ヨーロッパ)や地域(例:北ヨーロッパ、米国西海岸)を絞り込み、それ以外の局にはスタンバイしてもらうことを意味します。コールサインの数字による限定は、相手のコールサインが含む数字(0〜9)を特定することです。
このようなオペレーションは通常ならば推奨しません。膨大な数の局が、自分の該当する条件が巡ってくるまで、ただじっと辛抱しなければなりません。しかも、待ったからといって、必ずしも彼らの該当する条件をあなたが提示するとは限らず、いつQRTしてもおかしくありません。この状況はもちろん呼ぶ側の人を不安にさせます。そして、その「不安」こ そが、彼らををたちどころに態度の悪い'Cops'に化けさせる危険性の原因なのです。仮にコールを限定して交信相手を絞りこめば、呼んでいる人の90%以上が待機させられていることになるのです。
しかし、この方法で大きなpileupに対処すれば、まだまだ経験が浅いオペレータにパイルアップの中での運用方法を学ぶ機会を与えることになります。また、地域を絞り込むことの最大のメリットは、通常なら電波状況等から交信が困難な相手に、あなたと交信する機会を与えることにもなります。
以下に、地域限定を行う際の注意事項を記します。
- 通常では交信が困難な地域の人々に機会を与えたいなら、この手法を用いてください。
- pileupが手に負えないためにこの手法を用いるのなら、地域のローテーションは早めにしましょう。
- スタンバイしている地域の人たちに、あなたの予定を知らせてあげましょう。10分間はJAに絞り込むつもりですか? 次はEUですか? その次はNAでしょうか?いずれにせよ考えを伝えましょう。
- pileupが小さくなれば、限定を解いて通常のオペレーションに戻ってください。
- 数字限定した運用を一度始めたら、まっとうしてください。数字での特定を中断して、QRTするか限定を解くオペ レータを時々見かけます。これは全くひんしゅくものの行為です!
- 数字は0から初め、順に9まで昇ったのち、0に戻ってください。
- 数字をランダムに選んではいけません。0-5-2-3-8-4-…間違いなく嫌われます。
- 各数字でのQSOの数は、10が上限です。また数字毎に交信する相手の数は一定に保ちましょう。
- 各数字ごとにQSO数を決めれば、pileupに対してそれを告げ、次の数字に移行する際にも告知を忘れないでください。
- 繰り返しますが、pileup参加者の90%が待機していることを忘れてはいけません。また、必ずCopsがあなたの周波数で 送信してきます。数字を特定しての交信は、なるべくなら避けましょう。
交信相手を限定する基準として、大陸・地域・数字を紹介してきました。これ以外に相手国を限定しよとするオペレータがいますが、これはいかなる場合も避けるべきです。もう一度警告します、これは絶対に避けてください。国を絞り込むことは、それ以外の国のCopsの逆鱗に触れるものです。どう頑張っても、335のentitiesと交信することは不可能です。なぜこのような馬鹿げた手法を使う必要がありましょうか?
最後に一言:pileupの渦中にあるときに最も大事なポイントの一つは、運用中のペースを始終キープすることです。これができるようになれば、あなたもリラックスして望めますし、pileupへの参加者も安心します。しかし最も大事なことは…楽しむことです!
18. その他
CWのキークリックは、他のハムにとって非常に煩わしいものです。もしあなたのリグがクリックを発するなら処置をしてください。SSBにも同じことが言えます。過変調の電波は好ましく思われません。あなたの送信する電波がクリーンであることを確認してください。
Qコード、数コード(73/88)は、CWにおいて定型的な言葉や質問を省略するために用いられます。しかもこれらは音声QSOにはありません!音声なら「さようなら(Best regards)」と喋ればいいものを、わざわざ'73'と言う必要もありませんよね?この点においては、妥当なバランスを維持するよう心がけて下さい。音声の交信においてQコード、ナンバーコードは可能な限り控えるべきです。
音声で'73'と話すのは正しくありませんし、少々やりすぎに聞こえます。逆に、CWで"73's"と発信したりするようなこともないでしょう?
もしDX局のCW速度があなたにとって速過ぎるのに、どうしてもその相手と交信したければ、通信をスムーズに進めるための機器、例えばソフトウェアによるデコーダ等を用意してはいかがでしょう?さもなければQSOを完了するのに過大な時間を要し、相手にも迷惑がかかります。また、先方の送信内容が読み取れないがために、冷静に振舞うことすら困難になることでしょう。DX局� �の交信を待っている人たちが、他にも大勢いることを忘れないでください。
苦もなく、またソフトウェアを使用することもなくCWを聞き取れるようになるには、ただひたすら練習を重ねることにより腕を磨くしかありません。
"Not in the log." も.しQSLカードが度々このメッセージとともに返送されるようなら、あなたの運用方法を改める必要があるのかもしれません。「聴く」ことが、まず第一の要件です。相手の言うことが理解できないのなら、はじめから交信する意味はないわけです。このドキュメントを何度も熟読してください。そして実践することにより、オペレータとしての実績をつけましょう。そうすれば"Not in the log"のメッセージを目にすることがなくなると、自信を持って断言することができます。
QSLといえば、次のような格言があります。「QSOにおける礼儀は、QSLカードによって完了する」。もちろん、多くの人があなたのQSLカードをコレクションに加えたいと考えるでしょう。しかし、皆がそういうわけではありません。かくいう私自身は、ビューロ経由、ダイレクトを問わず、QSLカードを送付してくださった方には返信しないことはプライドが許しません。これは、ハムとSWL(Short Wave Listeners)の両方に等しく言えることです。幸いなことに私の居るベルギーでは、国内の無線を統括しているUBAという機関への年会費に、ビューロの利用料金が含まれています。非常に安価にて、世界各地へQSLカードを配送できるわけです。しかし、すべてのハムが同じようなしステムに恵まれているわけではありません。国により、ビューロの仕組みは異なり、中には決してコストの安くないところもあります。 QSLを発送するときは、このことを思い出してください。また、IARUのウェブサイト等を通して、QSLを発送する相手の国におけるビューロ・システムを知る努力をしましょう。あるいは、返送用の送料を同封した上、相手に直接カードを送付することを検討してみてください。この際にはIRC - International Reply Coupon (訳注:国際返信切手券として日本の郵便局でも購入可能)が使用できます。
また、別に電子的に交信の確認をする方法があります。たとえば、ARRLが提供するLoTW (Logbook of The World)
などがあります。この場合、紙媒体のQSLは必要なくなります。私自身は、旧式の媒体も歓迎しますよ。収納に使用している靴の空箱も、随分な数になりました!
DX局の中には、QSL交換よりも運用に専念できるようQSLマネージャを使用している場合もあります。多くのWebサイトで QSLマネージャの情報を得ることができますが、ここでは、よく交信中によく耳にするQRZ.comを紹介しておきます。
第二次世界大戦中、全ての無線局免許と通信機器が没収されたことをご存知ですか? そして終戦後、再びハムに許可を与えるよう政府に働きかけたのは、誰だったか覚えていますか?そう、他でもなくNational Radio Societies (IARUのメンバー達)です。こういったNPOこそが、あなたが免許証を所持できるよう、国家権力と交渉しあう力を持っているのです。こういった機関が発言力を持つのは極めて大事なことで、それを実現する方法はただ一つ、あなたにもメンバーの一員になっていただくことのみです。団結すれば、私たちは強大になれます。l'Union fait la Force(訳注:ベルギーの「国標語」)あなたはまだメンバーになっていませんか? ならば、一度参加を検討してみてください。もしあなたの国にまだ安価なビューロ・システムがないのであれば、立ち上がって社会に問いかける時なのかも知れません。なぜベルギーにできることが、我々の国にできないのか、と。ついでに、あなたが属する無線社会に、ボランティアとして貢献してはいかがでしょうか。もし政府にまで声を届けようと思えば、こういった機関こそが発言を通す唯一の窓口であることを肝に銘じてください。
DXに関する各種リソースは、インターネットでも見つけることができます。挙げ始めるとキリがありませんので、ご自身で検索システム等を活用して見つけてください。名前をいくつか挙げるとすれば、425 DX News Letter, ARRL Propagation Bulletins, Ohio Penn DX Bulletin, その他諸々があります。
IARUが定める帯域の割り当てと、あなたの属する機関が定める地域毎の帯域割り当てに慣れ親しみましょう。一覧表を印刷して壁に貼ってください。
以前に登場したIZ9xxxxとPipoは言う間でもなく、シシリア在住のあるハムの仮名・仮コールサインです。
さて、ここまでお読みいただいた方はお疲れさまでした。気分転換に爆笑できるサイトをご紹介しましょう。DL4TTによる sharp observations というサイトです。第19章を読み終えたあとは、ぜひこちらをご覧ください。
19. 結論
その少年も、昔はsmall pistol(設備規模の小さい)ハムでした。はじめのうちは彼も、大きなDX-peditionでただ一回でも QSOできれば満足していたものです。まず出力の小さい(というより、むしろそうしないと周囲が口うるさいのでやむなく)局で、300余りのエンテティを達成しました。そこには純粋に、一つでも多くの国と交信したいという想いだけがありました。
学習にも余念がなく、紙媒体のDX関連雑誌には全て目を通したりもしました。また、時には144MHz帯のDXチャンネルを聞き、彼らが最新鋭のアンテナでどのような交信を行っているのか聞くなど、寝る間も惜しんで情報収集に励んだものです。時にはただ一つのQSOを実現するために、何時間もコールしたこともありました。そして、努力の甲斐もむなしく結果に到らなかった日もあります。さらに輪をかけたような時間をかけて、pileupから抜けた出した日もあれば、努力が実らず翌日に持ち越� ��れることあったでしょう。休日があれば、一つでも多くの新しい交信を行うために打ち込みました。
さて、この少年は現在もsmall pistolハムです。この国の東側からハムが訪れると、必ず驚きの声を上げます。「えっ、まさか本当にこれだけの設備で、あのDXをこなしていたの!?」、と。
まさしく、DXを成功させたいという志ひとつが、効率的で競争に打ち勝てる局を作ろうという想いを強くするのです。成功するために、膨大な設備は不要です。これに加えて、正しくオペレートできる技術があれば、他に何も必要ありません。
私はときどき、DXクラスタ上でぼやいている人たちのところへ直接出向いて、ぼやくのに時間を割くよりも、困難なDXとQSOする方法を教えてやりたくなる衝動に駆られます。そして、言ってやりたいのです。「ばかな真似をやめて、DXに専念しろ!」
また、ある偉人が言ったように「DX こそすべて!」であると。
そして、新たなる交信ができるよう、幸運を願っています。その過程で、これまでに紹介したポイントが、技術向上に何かしら貢献すれば幸いです。
もしpileupをブレイクすることができなければ、いつでも私を頼ってください。あなたが新しいエンテティとの交信ができるたびに、ビールをご馳走いただければ他には何も求めませんから。
それと、忘れないでください。失敗をしない人などいません。かくいう私が失敗をしでかす瞬間を目撃することがあれば、そのときはニッコリ笑って、反面教師としてください。
なにはともあれ、幸あらんことを!このプロジェクトを遂げるために協力してくれた、友人の数々に感謝します。
このドキュメントの和訳は、David Shimamoto と Mac Shamamoto JA3USAの両氏によって行われました。ありががとう!
私の あるいは、 宛にメールにてご連絡いただければ幸いです。
ありがとうございました!
73 - Mark - ON4WW.
(January 2008)
追伸:この文章を最後まで読んでくださった方から、ご意見、ご感想が聞ければ有り難いです。何かしら役に立ちましたでしょうか、また何か抜け落ちている項目はありませんか?お声を聞かせてください。
ありがとうございました!
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